たまには仕事に絡むお話を!
猫や鼠の口ひげ(whisker)はクリントン大統領が2000年に「ナノテクノロジー国家戦略」をスタートさせた源です。
昔からガスを使用する炉の壁などに直径0.01~200ミクロンの繊維状のものの存在が知られていました。その繊維にグラファイト・ウイスカーとの名前をつけたのは1962年のベーコンと言う人が最初だったと私は認識しています。
私達がその研究を始めた20数年前には気相成長炭素繊維と呼ばれていました。これを加熱して黒鉛化(結晶化)したものをウイスカーと呼んでいました。
1991年NECの研究グループの方々が特に細い繊維の構造解析を行い、炭素が六角形の網目が並んだシート(今はグラフェンシートと呼ばれています)を筒状に捲いた構造をしていることを見いだし、カーボンナノチューブと名付けました。
巻き上げる向きによって何種類ものものが存在しますが、性質は大きくは金属性のものと半導体に分けられます。これが年輪状に重なった多層カーボンナノチューブもあります。
下図はCGで描いた単層のカーボンナノチューブです。細いものの直径は0.5ナノメートル位です。
ナノとは10の9乗分の一のことです。ミクロンの1000分の一の大きさです。
気相成長炭素繊維と呼ばれていたころの直径は500ナノメートル(0.5ミクロン)
以上でした。気相成長炭素繊維は非常に多層です。
少し前に米国のスモーリー博士が炭素原子60個からなる、サッカーボールの模様のような構造のフラーレンを発見した事と相俟って、ナノテクノロジーが急にもてはやされるようになりました。
上記クリントン大統領は日本に遅れた米国のナノテクノロジーを挽回させようとスタートさせたものです。かっての主体であった炭素からそれ以外のナノテクも広がっています。ナノサイズのものの技術開発や研究が爆発的に広がっています。何でもナノテクと関連付けることが流行っています。
私共の会社(と言っても今の私は正式な社員ではありませんが)では単層および多層の二種類のカーボンナノチューブを製造しています。
カーボンナノチューブはゴム・樹脂や金属の補強・導電性付与、リチウムイオン電池の電極などに使用されており、人工筋肉、燃料電池、キャパシタ、トランジスタ、集積回路などへの利用の研究も進んでいます。